オシム監督が就任して以来、日本代表は数試合をこなしてきましたが、ここまではまだ何も形になっていないというのが率直な感想です。アジアカップまでの強化プロセスを見るかぎり、監督がやってきた作業はおおまかに2つあります。「こういうサッカーをやっていく」というコンセプトを選手に刷り込む作業と、もうひとつは軸になる選手のチョイスですね。
言い方を変えると、その2つの作業しかしていない、あるいは時間の制約から、できていない。少なくともテストマッチではオシム監督流のサッカーが、まだ何ひとつ表現できていない状態に見えます。オシム監督を高く評価するメディアの人たちは多いですが、彼らの主張は、ほぼシュトルム・グラーツ(以下S・グラーツ)やジェフ時代のサッカーについての評価です。日本代表に関しては、まだピッチ上でスタイルを表現できていない以上、それもやむを得ないでしょう。評価のしようがないわけです。で、今回のアジアカップこそ、オシム監督の指導者としての力量を問う最初の機会だと位置づけられますね。
私がオシム監督について評価しているのは、モダンフットボールを追及している点です。時代とともにサッカーのトレンドも変化していますが、つねにその最先端を追い求めようとするスタンスがある。過去、S・グラーツやジェフで見せたサッカーも違っていますしね。確認したわけではないですが、きっとトレーニング方法も時代とともに変えているはずです。彼ほどのキャリアがあり、過去の成功実績がある指導者は、往々にして過去の方法論に固執しがちです。ですが、オシム監督の場合は違っている。それは、私がとても好感を持っている部分です。ただ、ジェフ時代のチームの成熟度に比べれば、日本代表はまだまだ。10パーセント程度でしょう。形になっていない以上、良いところ、悪いところを見極めることもできない。
少し脱線しますが、現在のモダンフットボールとは、バルセロナのサッカーがその代表格になると思います。ある選手にボールが入ったとたんに、人が動いて、ボールが動いて、サイドの選手のランニングが始まって、前線ではスペースを作り、そのスペースを使う動きが始まる。それらの動きが一気にスタートして、フィニッシュまで持ち込む。相手は、ものの見事に罠にはまる。オシム監督時代の好調時のジェフは、そうしたサッカーを実践していた。パスとかサポートとか、選手たちのポジショニングであるとか、飛び出すタイミングとか、いたるところにそれが見えましたね。
で、そのモダンフットボールを日本代表で表現しようとしているのが、現在のオシム監督なのだと思います。その初期段階ですね。
オシム監督のチーム作りで特徴的なのは、代表チームの"クラブ化"です。クラブチームと同じ手法で、チーム作りをしようとしている。だから、闘莉王のようにケガしている選手も、軸になると思っていれば少しでも呼んでおきたいのだと思います。ここからは想像ですが、きっと日本サッカー協会もそれを大筋で認めたうえで、彼を監督に招聘したんじゃないでしょうか。ですから、ときどきJリーグのクラブとは摩擦も起きていますね。ただ、ひとつ忘れてはいけないのが"クラブ化"という強化手法は、日本だからこそできることだということです。ヨーロッパや南米の代表チームであれば、これはちょっとあり得ない。
オシムの指導者としての手腕が初めて問われる大会
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信藤 健仁(しんとう かつよし)
1960年9月15日生まれ、広島県出身。中央大学からマツダ(現在のサンフレッチェ広島)に入団。87年には日本代表デビュー。ディフェンダーとして活躍した。その後、三菱(現浦和レッズ)、フジタ(現湘南ベルマーレ)でプレーし95年に現役を引退した。01年には横浜FCの監督に。現在は解説者としても活躍している。







