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些細なキッカケからのめりこんだ世界
――そもそもアナウンサーという業種には、興味や憧れがあったんですか?

「いえいえ、じつはまったく。大学を出て、アメリカへ留学して帰国したあとに、ある事務所のオーディションを受けてみたらと誘われて"ちょっと挑戦してみようかな"程度の考えでしたね、最初は」

――で、見事に合格した。

「ほんとうは経験者を募集してたんですけど、応募要綱に"英語が話せればなお可"みないな文言があって、そこにすがってダメもとで応募しました。そうしたら書類選考は通って、面接でスキルは徐々に覚えましょうって話になったんです。まったく経験がなかったものですから、それから半年間は、仕事をせずにみっちりとアナウンサーのスキルをマスターするためのレッスン漬けにさせられましたけど(笑)」

――サッカーへと足を踏み入れたキッカケは何だったんですか?

「三重県の出身なんですが、サッカーの盛んな地域で、子どものころからサッカーは大好きだったんです。サッカー部のマネージャーをやるくらいに。先日、このコーナーにも出られてましたけど、小倉隆史さんとか、ヨンチューコー(四日市中央工)が高校サッカー界で強かったりしましたしね。事務所に入ってしばらくは、旅番組などスポーツ以外の仕事がほとんどだったんですが、マネージャーさんに、"Jリーグがやりたい"とプッシュしてました。それで事務所の方が中継制作をしているところに打診していただけたようで、リーグの中継のリポーター候補のひとりとして、オーディションのようなことをさせていただいたんです」

――具体的には、どんな選考を?

「そのとき、私も含めて3人の候補がいたのですが、それぞれJリーグの試合会場に行って、何でもいいから現場で思ったことを言葉にしてテープレコーダーに吹き込んでくれと。それで選んでいただいたんです」

――それがいつの話ですか?

「1999年でしたね」

――スポーツの現場は、旅番組などとはかなり違っていたのでは?

「まったくの別ものでした。たとえば、旅番組なら、準備された状況に自分が行き話をするということのほうが多かったです。けど、サッカーの試合会場では、状況が刻一刻と変わっていく。また、事前にたくさんの情報を仕入れておかないと、いざというときに。。

――ピッチリポートならではの、やりがいと難しさは?

「ゲームは生き物なので、どこで、どんな情報、どんな言葉を挟みこんでいくか。そこは一番難しくもある反面、ハマッたときはとても嬉しい瞬間です。試合展開のほかに、実況の方のリズムもありますから、それも妨げてはいけない。視聴者の方の邪魔になってもいけない。そのうえで、ピッチでしか分からない、その瞬間に視聴者の人にとってメリットのある情報を自信をもって知らせることができるようにしたいと思ってます」

――理想的の実況ができた試合って、具体的に記憶はあります?

「これという試合は今すぐには思い浮かばないんですけど、たとえばジェフを率いていた頃のイヴィチャ・オシム監督の指示って独特で、それをリポートするのは楽しかったです。試合中にある選手の名前をさかんに口走っていたと思うと、本当にその選手のところでピンチが起こったりするシーンを何度も目にしました。何かが起こる前から危険を察知していて、それを事前に選手たちに警告するというか。逆に言うと、それを事前に知らされた選手たちも、その指示を聞いてちゃんとその通りに動くことが多かったし、そういうことで逆にそこからチャンスが生まれるというシーンも数多く見ました。で、そのあたりの情報をリポートしてじっさいに、そのとおりになったことがあります。そういうことは、やはりピッチリポートでしか視聴者に伝わらない部分だと思いますから、ピタリとはまると気持ちよいです」

――ほかの仕事あるいはサッカー以外のスポーツへとフィールドを広げようとは思いませんか?

「うーん、たしかに仕事の効率というか、それこそ経済的な面だけ考えれば、仕事の分野を広げるっていう選択肢もあると思います。ただ、いまのサッカーのお仕事をしているなかでも"まだ時間が足りない"と思ってしまうんですよね。もっと時間があれば、さまざまな情報や知識を収集できると思っているので他のことに手を出すゆとりがないというのが本音です。サッカーの、とくにリーグ戦のリポートをしていると、各チーム、各選手の流れというものがあるじゃないですか。調子が良いとか悪いとか。前の試合はどんな試合だったか。日々、状況が変わっていく人たちを追いかけなければならない。で、ちょっとでもブランクができてしまうと、一気に追いていかれてしまう。だから、サッカーだけに注力したいし、そうしてます」
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