
――フィジカル、メンタル、タクティクス。車椅子バスケットボールは、その全てを必要とする、アスリートスポーツと言えますが、他のスポーツと決定的に異なる点は、選手が障害を負ってから、コートに立つまでの間に、乗り越えなければいけないものが非常に多いという点です。
「取材では、選手達に体験を語って貰っているのですが、そういう体験を聞いて実際描くっていうのは、一回自分を通さないといけない訳です。自分で消化するためには、自分がどれだけ彼等の身に立てるのか?想像できるのか?とにかく、そこを出来るだけやろうと思っていますね」
――例えば、漫画『リアル』を読むと、思わず目を背けたくなるような現実も数多くあります。
「飲み込むのはなかなか難しいですよね。あとは、想像するといっても、例えば痛みとかっていうものは、想像するにも限界がありますからね。そういうのを経験している人達の言葉っていうのは、何事にも代え難いものがあります。
できるだけ想像しようとはするものの、想像の限界も感じつつ、読み物だし、フィクションですから、障害者といわれる人達がみんなこうだっていうつもりも毛頭なくて、あくまでこういう人もいるよっていう部分で描いています」
――私が、初めて選手の方に取材をさせて頂いた時には、やっぱり慎重になりましたし、言葉も選びました。しかしながら、実際、その選手の方は、私に対して全く壁がなかった。『リアル』でいうところの野宮君が、これを象徴しているのかもしれませんが、結局、つまらない遠慮をしているのは周囲の方だったりもするのだな、と。
「やっぱり知識が圧倒的に足りないですよね。日本で普通に暮らしているとね、なかなか機会がそうそうある訳でもないですし、それは無理のない反応だと思うし、決してそれは責められることではないですよね。
どんどん知る機会が増えれば、僕自身もそうだし、単に知らないだけっていう部分がほとんどだと思うんですよ。知らないことっていうのは、人間は本能的に身構えますからね。それは当たり前なので、まずは知ることじゃないでしょうか?」
――取材をする最初の方は、先生もこのような経験をされたのでしょうか?
「僕は誰に対しても、遠慮深い方ですから(笑)」
――実際に作品の中では、こうした障害を負った方のリアルな心理描写が、ありのまま描かれています。
「この題材に選んだ時点で、そうするしかなかったというかね、結局そうな訳ですから。それを隠すのもおかしいし、ちょっと変えて描くのも、美化するのも違いますよね」
――確かにおっしゃる通りです。
「結局、そうあるように描くしかないんですよ」
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