
![[写真] 前園真聖](/img/grazie/200804/photo_maezono1.jpg)
「勝った気はしない」と前園氏(photo by livedoor スポーツ)
語り継がれる試合がある。日本サッカー界において、96年アトランタ五輪のブラジル戦は、まさしくそんな試合だった。世界最強のサッカー大国ブラジルを日本が破るという事実は、もしかすると、他の競技で金メダルを取ること以上に、ハードルの高い快挙だったかもしれない。
当時、チームのキャプテンを務めていたのが前園真聖氏だ。同時に、攻撃の核として、チームの命運を握るキープレーヤーでもあった。そんな彼から見た"マイアミの奇跡"とは、いったいどんな出来事だったのか。また、日本サッカー界にとって28年ぶりの出場となった、五輪本大会での激闘は、選手や日本サッカーに何をもたらしたのか。2回にわたる前園氏のインタビュー前編は、12年前のマイアミの"真実"に迫る。
――前園さんといえば、アジア予選も含めて、アトランタ・オリンピックでの活躍が印象深いですが、いま振り返ってみて、ご自身にとってはどんな大会でしたか?
「あのときは、日本のサッカー界として28年ぶりの出場がかかっていたこともあって、アジア予選のときから、とても大きな期待を持たれているという認識はありましたね。ただ、じっさいにプレーしている僕ら選手たちは、失うものもなかったし、Jリーグがスタートしていたこともあって、これからは世界に挑んでいくだという意識も高まっていた。ですので、“自分たちで日本サッカーの未来を開くんだ”みたいな意識がもっとも強かったと思います。それが、本大会でああいう結果(グループリーグ敗退も3試合で2勝1敗と勝ち越す)につながったんじゃないかと、いまは思ってますね」
――グループリーグの顔ぶれ(ブラジル、ナイジェリア、ハンガリー)は日本にとって過酷だったと思いますが。
「そうですね。予選も大変でしたが、本大会も組み合わせが組み合わせでしたから、周りにはムリだろうってムードがあった印象はあります。前評判としては、かなり厳しいと。ただ、僕らとしては、勝ち負けは当然意識していましたけど、同時に、いま自分たちの実力が、世界のなかでどれくらいの位置にあるのか。まずはそれが知りたいし、そういう機会を得られることにワクワクしていた部分が大きかった。それに、周りの評価は低いし、実績からすればそれは当然と思いつつ、心の中では"もしかしたら、やれるんじゃないか"という気持ちも少なからずありましたしね」
――『マイアミの奇跡』といわれたブラジル戦は、衝撃的でした。
「ブラジルには結果的に勝ちましたけど、まあ、じっさいにプレーしていた僕の感覚では、勝った気はしなかったというのが正直なところですね。何もさせてもらえなかったって印象が強いです。もちろん、どういう内容であれ、ブラジルに勝ったということは大きな意義があるとは思ってます。じっさい、あれ以降、日本がブラジルに勝った試合はないですよね。それは大きなことだと思ってます。ただ、やっぱり、“ブラジルに勝ちましたね”と言われると“ん〜”という気持ちでした」
――ブラジル、ナイジェリア、ハンガリーの3試合。前園さんはすべてに出場されてますが、もっともインパクトのあった試合をひとつあげるとすれば?
「ナイジェリア戦ですね。初戦で、どんな形にせよブラジルに勝って、“よし、次はもっと日本の良いところを見せよう”という気持ちが強かったので、もっと勝ちに行きたかったというか、もう少し欲を出したサッカーをしたかったという悔しさが残る試合でした。あのあたりに、国際舞台に慣れていない、当時の日本サッカーの経験不足が戦い方にも出たのかなとも思ってます。もし、あれが、2、3年後や、次の大会で同じシチュエーションになったら、もっと違った戦い方ができたんじゃないかと思います。ま、いま思うと、それぞれが与えられた環境のなかでベストを尽くしてましたし、あれだけのプレッシャーのなかで、やることはやったかなとは思ってますが。選手も、監督、コーチも」
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